世界で1つのリバーシブルエコバッグ
「インスタを見て一目惚れをしたので…」
と、心温まるご依頼をいただきました
お送りいただいたのは、亡きお母様がお姉様のために仕立てられたという、鮮やかなグリーンの色無地(いろむじ)
そして、タンスにそっとしまわれていた黒の羽織り
この二つの大切な布地を使い、いつでもお母様を身近に感じられるリバーシブルエコバッグをお作りすることになりました
今回のエコバッグの仕様
表側(リバーシブルなので、どちらも主役ですが): 鮮やかなグリーンとシックな黒の組み合わせ
裏側: 落ち着いた黒一色


作業工程
① 大切な布地を、丁寧に解くことから
コートやスカートなど、たくさんの生地が必要な場合は着物や羽織を全て解きますが、今回はエコバッグ
使う分量に合わせて、袖(そで)と衿(えり)の部分だけを丁寧に解いていきます
古い着物を解く際は、糸を力任せに引っ張ると繊細な生地を傷めてしまうことがあります
ですから少し手間はかかりますが、リッパーという道具を使って少しずつ慎重に糸を切っていきます
袖の袂(たもと)のカーブしている部分はとても細かく「ぐし縫い」で丁寧に縫われています
当時の職人さんの手仕事の素晴らしさを感じますね
そして、長年眠っていた布地を解くと、古い埃が出てくることも
何十年も前に、どなたかが心を込めて縫い上げた一枚の着物
まさか数十年後に解かれて、エコバッグに生まれ変わるとは…
作った方も想像していなかったでしょうね

② 布地の風合いを守る「水通し」
エコバッグのような小物は、頻繁に洗濯するものではありませんが、念のため、そして生地の色落ち具合を確認するために「水通し」という作業を行います
これは、生地を一度水にくぐらせることです
まず洗面器に水を張り、生地の端を少しだけ浸して色落ちしないかチェックします
大丈夫そうなら、生地全体を優しく水に通します
この時、おしゃれ着用の洗剤などを使うと、かえって色落ちしてしまうこともあるので注意が必要です
その後、軽く脱水し、形を整えて陰干しします
風通しの良い日なら、あっという間に乾きますよ
少し湿り気が残っているうちに取り込むと、アイロンがけも楽ちんです
アイロンをかける際は、生地を引っ張ると伸びてしまうことがあるので、優しく伸ばさないように注意しながらかけていきます
この時、残っている糸くずがないか、小さな穴が開いていないか(例えば、男性用の着物などでは、煙草による小さな焦げ穴が見つかることも!)、シミや汚れ、色褪せなどがないかもしっかりとチェックしていきます


③ いよいよ「裁断」です
生地の準備が整ったら、いよいよ裁断です
今回は型紙は使わず、生地の幅を活かして作ります
生地幅の半分を二枚縫い合わせたものが、バッグ本体の幅になります
ただ、着物や羽織は一枚一枚、微妙に生地の幅が異なります
そのため、必ず寸法を測って狭い方に合わせるのを忘れないようにします
「広い方の生地の縫い代を少し多めに取れば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、きれいに仕上げるためには、幅を揃えて裁断する方が後の作業がスムーズに進みます
④ ドキドキの「ミシン作業」
いよいよミシンを使って縫い合わせていきます
まずはミシン糸の色選び
今回は黒が基調なので、迷わず黒糸を選びました
縫い始める前に、生地の横幅と縦幅の中心に「合印(あいじるし)」という目印を付けます
そして、生地の表と裏を間違えないように注意しながら、待ち針を両サイド、中心、そしてその間と均等に打っていきます
黒い生地に黒い糸で縫うと、多少縫い目が曲がってしまっても目立ちにくいというメリットはありますが、もし間違えて解くことになると、糸が見えにくくて本当に大変なんです!
ですから、「絶対に一発で縫い上げるぞ!」と気合を入れて縫い進めます
このエコバッグは、一度縫い止めた箇所から新たに縫い始める部分があります
そういった箇所は、隙間ができてしまわないように、最後の一針と最初の一針を重ねるように丁寧に縫うのがコツです
余計な生地を挟んでしまわないように、時にはスマートフォンのライトで手元を照らしながら、息を止めて集中して縫うこともあります!
特に底の部分は二つの色を切り替えて使うデザインなので、この色の境目がビシッと揃うように、細心の注意を払います
上の布と下の布は縫っているうちにズレやすいものなので、あらかじめ少しズラして縫い始めるなど、工夫が必要です
正直なところ、ここが一番難しく、何度か縫い直しました
最後は少し妥協してしまった部分もありますが…
縫い終わったら、バッグをひっくり返すために開けておいた返し口を「コの字縫い」で丁寧に塞ぎます




⑤ 最後の仕上げ
いよいよ完成間近です!
バッグの四隅を「目打ち」という先が尖った道具を使って、内側から優しく押し出すようにして、きれいな角を作ります
そして、全体に軽くアイロンをかけて形を整えれば…
ついに思い出の着物が、素敵なリバーシブルエコバッグに生まれ変わりました!


⑥さいごに
いかがでしたでしょうか?
大切な着物や羽織が、こうして新しい形となり、これからもお客様の毎日に寄り添えることを大変嬉しく思います
着物リメイクには、ただ古いものを再利用するだけでなく、そこに込められた想いや物語を未来へ繋ぐ力があるのだと、改めて感じました

